家や土地の相続放棄手続きはどうすればいい?

家や土地の相続放棄手続きはどうすればいい?

相続放棄という言葉を聞くことがあります。家や土地を含む、すべての遺産相続を放棄するという、相続人の意志を表す言葉です。相続放棄をするにあたっては、さまざまな理由があると思います。

しかし、いざ相続を放棄するとき、どんな手続きをすればいいのかなど、疑問が残ります。その他にも、被相続人が存命中にできないのか、弁護士や司法書士に依頼すれば済むことなのか、他にも何か手続きが必要なのか、などと分からないことがたくさん出てきます。

ここでは相続放棄に関して、分かりやすく解説していきます。

相続放棄とは

初めに相続放棄の仕組みから解説していきます。

相続する財産を残す人を被相続人といいます。この時の財産は、マイナスの負債も入ってくるので注意が必要です。被相続人が残した財産を相続する人を相続人といいます。

相続放棄とは、本来は被相続人が残した債務超過の負債を、相続人は引き継がなくていいと法律に定められた権利です。相続人が被相続人の残した債務超過の相続財産から免れるためにできた法律です。

このように相続放棄で、被相続人が残した負債から免れることができて、人生を狂わせないようにできます。これが、相続放棄の大きな効果です。

相続人が複数存在しているような共同相続の場合では、何人かが相続放棄をすると、相続金額が増えます。ただし、超過している債務についても同様になりますから、被相続人の財産内容はしっかり把握しておく必要があります。

これとは別に、相続放棄のもうひとつの効果として均分相続によって、土地や家屋とその他の家産が分散することを防ぐことが出来ます。相続人が複数いた場合に、昔でいう家督相続をする立場の人以外は相続放棄をしてもらうことで、家産を一人の相続人に集中させることができます。

相続放棄の期限

相続放棄はいつでもできるのかというと実は期限があって、自己に対して相続が開始されたことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の意志を申し立てしなければいけない、ということが基本的なルールになります。

家庭裁判所が相続放棄の申し立てを認めると、申し立て人は初めから相続人にはならなかったものと見なされます。これは、民法939条に定められています。

なおこの期限ですが、民法915条によって以下のように定められています。

「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」とあって、これが期限の根拠です。

しかし、相続放棄は相当の理由があれば期限が過ぎていても、相続放棄が出来るという考え方があります。例えば、親子の縁を切っていたので、親が亡くなったことを知らなかったし、親の財産状況をまったく知ることが出来なかった、などという理由です。

このような場合は、知った日から3ヶ月が期限になる、という考え方をします。

他にも、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄をするかどうかの根拠になる財産内容の調査が終わらなかった場合などは、家庭裁判所に申し立てをすることで、最長3ヶ月間まで期限を延ばしてもらうことができます。

また、自己に対する相続の開始から3ヶ月を経過した後で、被相続人に多額の債務があることを知った場合でも、その内容を証明できれば、3ヶ月を経過した後に相続放棄を認められる場合もあります。

このように、法律でも正当だと認められる理由があって、理由に酌量の余地がある場合には、3ヶ月の期限を超えても相続放棄を受け付けてもらえるケースもあります。

ただし、相続放棄の手続きは1回しかできません。書類等に不備があったり、申述内容が曖昧だったりすると裁判所は相続放棄の申請を却下しますから、十分に注意が必要です。

生前に相続放棄する方法

被相続人に完全に債務超過になるほど多額な債務があることを知っていた場合、被相続人が亡くなった後でもめないように生前に相続放棄をしておきたいと考えることもあります。

しかし、法律上は被相続人が存命のうちに相続放棄をすることは出来ません。良く言われているように、念書を書いておけば大丈夫だということもありません。念書は、裁判にでもならない限り、法的根拠がないからです。

それと相続ということ自体、被相続人が亡くならない限り、法的には相続にはあたらならないからです。

しかし、被相続人が存命のうちに相続放棄と同じ効果を持たせる制度はあります。その方法が、遺留分を放棄することです。

遺留分とは、法律で定められている相続人が最低限受け取れる相続割合、という解釈が一般的です。

例えば遺言書に「長男だけに全ての財産を相続させる」となっていても、他の子どもたちの生活が支障をきたすケースもあります。そのようなことを防ぐために全ての相続人が受け取れる相続分を遺留分といいます。

この遺留分を放棄することで、生前に相続を放棄したことと同様な効力を持つことが出来ます。

ただし、裁判所の許可を得なければ、遺留分の放棄は認められません。裁判所の主な判断基準としては、遺留分放棄が本人の自由意志によること、放棄の理由に合理性と必要性があること、放棄と引き換えに現金をもらえるなどの代償性があることなどがあります。

このようなポイントに注意をして、遺留分放棄の手続きをする必要があります。

手続きの流れと必要書類

では、実際に相続放棄をしようと思った時に、どんな流れがあるのか、どのような書類が必要になるのかを見ていきます。

まず流れですが、前にも書きましたが相続放棄は原則一度しかできないので、失敗は許されません。その為、弁護士などを代理人に立てて裁判所に申述をすることが、一般的になります。

まずは、弁護士に相続放棄の手続きを依頼することが、最初にやらなくてはいけない手続きになります。

必要書類まとめ

弁護士が受任すると、家庭裁判所から依頼者に代わって申述をするための書類を要求されますが、それは次の通りです。

相続人の立場に関係なく必ず必要な書類

  • 被相続者の住民票の除票又は戸籍謄本
  • 申述人の戸籍謄本

相続人の配偶者

  • 被相続人の脂肪記載のある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)

被相続人の子供、孫・ひ孫などの代襲者、第1位相続人

  • 被相続人の脂肪記載のある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 申述人が代襲者の場合は被代襲者の死亡記載のある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)

被相続人の父母、祖父母、第2位相続人

  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 被相続人の子や代襲者で死亡している人がいる場合には、その子又はその代襲者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 被相続人の直系尊属に死亡している人がいる場合には、その直系尊属の死亡記載がある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)

被相続人の兄弟姉妹やその代襲者(甥や姪)、第3位相続人

  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 被相続人の子や代襲者で死亡している人がいる場合には、その子又はその代襲者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 被相続人直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 申述人が代襲者の場合には、被代襲者の死亡記載のある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)

この他にも添付が必要な書類があれば、代理人が要求していきますから、それに従って揃えてください。

書類がすべて揃うと、代理人が被相続人の最後の居住地だった地域を管轄する、家庭裁判所に提出します。この時に被相続人の債務に責任を負わないようにすることが目的の場合、相続放棄受理証明書の発行申請も一緒にしておきます。

書類提出から1週間程度経つと、家庭裁判所から「相続放棄の申述についての照会書」という書類が送られてきますから、その書類に回答をして返送します。

この照会書にあったいくつかの質問事項に対する回答に問題がなければ、後日、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が郵送されてきて、手続きは完了です。

手続きは誰が行うの?

相続放棄の手続きですが、相続放棄を希望する相続人が行います。相続人が複数名いた場合でもその中の誰かが代表をして、全員分の相続放棄をすることは出来ません。あくまでも、相続放棄を希望する相続人が各自で手続きをすることになります。

しかし、相続人が未成年だった場合には、法定代理人である親権者が本人に代わって申述をします。

ただし親権者が申述できないケースとして、親権者が被相続者の配偶者で共同相続人となっていて、未成年者のみが相続放棄をする場合や、複数の未成年者が相続人で一部の未成年者だけが相続放棄をする場合などは、裁判所に申し立てて、特別代理人を選任する必要があります。

相続放棄にかかる費用

相続放棄にかかる費用ですが、裁判所に対しては印紙代800円と相続放棄受理証明書発行費用の190円、それと返送用の郵便切手代と封筒代だけですから、高くても1,500円以内になります。それと、市区町村役場で取得する戸籍謄本などの費用が必要です。こちらは、申述人の立場によって必要書類が違いますので問い合わせてみてください。

ほかに、代理人の費用が必要になります。代理人ですが普通は弁護士又は司法書士に依頼をしますが、依頼内容によって金額は変わってきます。

相続放棄の相談、書類作成、親戚への相続放棄通知程度までだと、安ければ1万円ぐらいですが、必要書類と情報収集、書類提出代行、相続放棄受理証明書の発行請求など、手続きのすべてを依頼すると、5万円以内、3万円以上が相場のようです。

ただし、弁護士事務所や司法書士事務所によって料金には差がありますから、事前確認が必要です。

相続放棄する際の疑問

相続放棄をする場合には、さまざまな疑問が発生します。

中でも多いのが、保険金の問題、放棄した土地や家の行方、相続放棄が取り消しできるのか、になります。他にも相続放棄に関する疑問はたくさんあると思いますが、ここでは3点について解説していきます。

相続放棄すると保険金は受け取れない?

被相続人が加入していた生命保険ですが、相続放棄をしても受け取ることが出来ます。その理由は、保険金は受取人の固有の財産となりますから、被相続人の財産にはなっていないので受け取ることが出来ます。

ただし、相続を放棄すると相続人とはみなされませんから、非課税額の適用を受けることは出来なくなります。しかし、一般の基礎控除は適用されます。基礎控除は、

3000万円+(600万円×法定相続人の人数)

で計算されます。この時の法定相続人の人数ですが、相続を放棄した人も人数に含みますから注意してください。

全員が放棄した家や土地はどうなる?

相続人全員が相続放棄をしたときに、家や土地はどうなるのかという問題があります。このことは民法940条に次のように定められています。

「相続を放棄した者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることが出来るまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」

となっていますから、相続放棄をしても管理責任があるということになります。つまり、近隣や地域住民に対して、悪影響がないようにしていく義務があるということです。

しかし、このようなケースを解消する方法があります。それは、裁判所に申し立てて相続財産管理人を選任してもらう方法です。

相続管理財産管理人がついて、はじめて相続放棄物件の管理責任がなくなりますが、相続財産管理人を選任するには予納金という制度があって、その額は数十万円から100万円というコストがかかります。

相続放棄をした家や土地は国庫に納める形になるから、管理責任は発生しないと思いがちですが、実はこのような制度になっていますから注意してください。

相続放棄を取り消す方法

いったん相続放棄が承認されると、ほとんど取り消しをすることは出来ません。例えば、知らなかった財産が出てきたから取り消したいなどの理由でも、取り消しは不可能です。

相続放棄取り消しは、相続放棄申請書を家庭裁判所に提出して、まだ受理されていない期間だけしかできませんから、十分に注意が必要です。

ただし、例外的な理由で取り消しを認めてくれることがあります。それは以下の3項目です。

  • 脅迫されて相続放棄をさせられた
  • 詐欺にあって相続放棄をさせられた
  • 未成年者が相続放棄をしたときに、法定相続人の同意がなかった

これらの理由以外では、相続放棄を取り消すことは出来ません。また、これらの理由についても、しっかり証明できなければ取り消しは出来ないことになります。

相続放棄をする時には、十分に調査をしてからにしてください。