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住宅ローンの返済が終わったら必ずやらなくてはいけない手続きがあります。それが抵当権抹消手続きです。
金融機関はローンの物的担保として、抵当権を設定しています。抵当権は登記簿謄本に記載されていますから、これを外さないと本当の意味で自分の物にはなりません。
抵当権はローンを完済しても自然に外されるものではありません。金融機関も保証会社も、抵当権抹消の手続きをしてくれないので、自分で行う必要があります。
抵当権抹消の手続きはどうやってやれば良いのか、自分で抵当権抹消の手続きをすることは出来るのかなど、分かりやすく解説をしていきます。
抵当権とは
そもそも抵当権とはどんなものなのか、なんで抵当権があるのかという疑問もあります。住宅についている抵当権の多くは、住宅ローンに対する物的担保です。
担保とは、将来的に他人に不利益を与えないことを請け合い、もし不利益が生じた時は担保を使って不利益に補うことです。抵当権とはその担保を得るための権利で、権利や財産を借金などの保証に当てることです。
よく金融機関の人が使うフレーズに「この抵当権の担保物件」ということがありますが、抵当権は担保セットになっていると考えれば分かりやすいと思います。
では、抵当権の具体的な例ですが、例えば5,000万円の物件を買おうとします。自己資金は3,000万円で、手元に1,000万円残して、2,000万円を頭金に、残りの3,000万円をローンにしたとします。
金融機関は、ローンの対象になっている物件を担保にして抵当権を設定します。この時点で、もしローン契約者が返済できなくなった場合は担保物件を売却してローンの残債を清算する権利の保証を、金融機関が得られたことになります。
このように抵当権を設定することで、ローン契約者は住宅を手に入れることが出来ますし、金融機関は安心して融資をすることが可能になります。
なお、抵当権設定登記の内容ですが、以下のようなことが記載されます。
- 登記の目的:抵当権設定
- 登記の原因:○年△月×日金銭消費貸借同日設定
- 権利者その他の事項:事実を明記
- 債権額金:○○円
- 利息:○%
- 遅延損害金:○%
- 債務者:ローン契約者氏名
- 抵当権者:□□銀行
この抵当権ですが登記簿謄本の乙区に記載されますから、ローンを完済した時点で抵当権抹消をしておかないと、いつまでも抵当権が付いたままになってしまうので、ローン完済時には抵当権抹消手続きをしなくてはいけません。
抵当権が付いたままにしておくと、売却もできませんし新たなローンを組むこともできなくなってしまいますから、抵当権抹消手続きが終わるまではローン中だと思った方がいいでしょう。
抵当権を抹消する際の流れ
抵当権を抹消する際の方法は2通りあって、1つは司法書士に依頼をする方法、もう1つは自分で行う方法です。いずれの場合の流れも必要書類を揃えることから始まりますが、司法書士に依頼する場合はそれに加えて委任状が必要になります。
司法書士に依頼をする場合は必要書類が揃ったら、郵送、あるいは持参して届ければ、後は全部やってもらえます。
自分で行う場合は必要書類を持って、法務局がやっている平日の日中に行って登記手続きをします。
抵当権抹消の流れをまとめると、
- ローン完済
- 金融機関と法務局から書類をもらう
- 書類に必要事項を記載
- 法務局に書類を提出
- 抵当権抹消登記完了
という流れになります。
抵当権抹消手続きでの必要書類
抵当権抹消手続きには、以下の書類が必要です。自分で用意するものと、ローン完済時に金融機関が用意してくれるものがあって、以下の通りです。
- 登記原因証明情報:金融機関が用意
- 抵当権設定時の登記済書または登記済識別情報:金融機関が用意
- 抵当権者(金融機関)の委任状、代表者事項証明書:金融機関が用意
- 抵当権抹消登録の対象になる不動産の登記簿謄本:自分で法務局に取りに行く
これが一般的な抵当権抹消に必要な書類ですが、イレギュラーなケースだと別に必要な書類もあります。
例えばローンを組んだ物件が賃貸などの投資物件で、引っ越しをして抵当権設定時と現住所がちがう場合には住民用と戸籍附票が必要になります。他にも、結婚などで姓が変わっていたり戸籍に移動があった場合は、戸籍謄本などが必要になります。
では、一般的な抵当権抹消手続きに必要な書類について、説明をしていきます。
登記原因証明情報
登記申請する抵当権抹消の原因を証明する書類で、具体的には抵当権解除証書や抵当権放棄証書、弁済証書などになります。
金融機関が必要事項を記載して渡してくれる場合と、必要事項が未記入になっているので自分で記入するケースがあります。
金融機関が記入してくれた場合には、内容に間違いがないかどうか確認する必要がありますし、自分で記入する場合には間違いのないようにしなくてはいけません。
抵当権設定時の登記済書または登記済識別情報
抵当権設定時の登記済書または登記済識別情報は、抵当権設定時に金融機関などの抵当権者に交付されます。再発行されない書類なので、登記義務のある抵当権者に登記申請する意思確認のために提出義務がある書類です。
抵当権者(金融機関)の委任状、代表者事項証明書
抵当権者が金融機関などの場合、抵当権抹消登録を金融機関自らですることはありません。そのため、登記権利者である不動産所有者が代わって手続きをするので委任状を交付してくれます。
委任状ですが、金融機関の代表者が抵当権抹消の意志を持って交付したことを証明するために、代表者事項証明書も添付してくれます。
抵当権抹消登録の対象になる不動産の登記簿謄本
抵当権抹消登録は登録対象になっている不動産の権利関係を前提にするので、対象の不動産の権利関係をしっかり把握するために必要な書類です。つまり、抵当権抹消登録の基礎資料です。
司法書士に依頼した場合の費用
司法書士に抵当権抹消登録を依頼すると、費用はとの程度かかるのか気になります。
費用は司法書士事務所によって多少の違いはありますが、だいたい15,000円から20,000円未満という感じです。
土地登録の単位で「筆」という単位を使いますが、1筆1棟で18,000円という司法書士事務所もあれば、5筆1棟で14,040円という司法書士事務所もあります。
ちなみにこの場合の料金ですがほとんどの場合は基本料金で、何か必要書類が増えたりするとその都度料金が数千円単位で加算されます。
中には必要事項を記載して、見積もりを取ってもらう形式の司法書士事務所もありますし、なんと1件につき980円~という、驚くような料金体系のところもあります。
多くの司法書士事務所は公式ページに料金を掲載していますから、問い合わせをして見ることをおすすめします。
自分で抵当権抹消手続きを行う方法
抵当権抹消手続きは自分でもできます。実はあまり知られていないことなのですが、不動産登記は本来自分で行うことが基本になっています。
自分で抵当権抹消をする方法は2通りで、1つは法務局へ行って手続きをする方法です。もう1つが法務局へ一度もいかずに済む、必要書類を法務局へ郵送する方法です。それぞれの方法について、説明をしていきます。
法務局に行って申請
まず必要な書類を揃えなくてはいけません。抵当権者である金融機関からは、ローンが完済すると送られてくるものがありますから、それを失くさないようにします。
その他の書類ですが、法務局に行くと無料でもらえます。この時に登記相談窓口で、書類の書き方を教えてもらえば、ミスをしないで書けますから利用すると良いと思います。確実なのは鉛筆で薄く記入しておいて、後からボールペンなどで正式に記入すれば、間違いないでしょう。
すべての提出書類に必要事項を記入できたら法務局に持っていって、窓口で売っている収入印紙を貼って提出します。この時に抵当権抹消登記が完了したことを証明する、「登記完了証」の郵送を希望するのでしたら、必要な金額の郵便切手も添えて提出すると、手続き完了後に送ってもらえます。
法務局によっては30分程度の無料登記相談をしてくれるところがあって、書類のチェックをしてくれますから、事前に必要な書類をすべて持ち込んでチェックをしてもらうとミスなく申請を通すことが可能です。登記相談窓口と合わせて利用すると効率的です。
費用は印紙代2,000円と登録完了証郵送用の切手代、それに法務局までの交通費だけです。
郵送で申請
法務局に行って抵当権抹消登録をするためには、平日の日中の時間を使う必要がありますから、時間的に無理な人もいます。こんな時にはインターネットと郵送を使って、すべての手続きをすることが出来ます。
法務局に行って揃える必要がある書類も、法務局のホームページからダウンロードをすることが出来ます。
書き方ですが、「抵当権抹消」などのキーワードで検索をするとかなりヒットしますから、それを参考にして空欄を埋めていくと、案外楽に書類が作れます。
作った書類をプリントアウトして、抵当権者である金融機関から送られてきた書類と一緒に、郵送すれば受け付けてもらえます。この時に、郵便物を扱っているコンビニや近くの郵便局などで収入印紙を買って貼っておくことと、登録完了証郵送用の切手を同封することを忘れないでください。
注意点としては抵当権抹消登録の受付日は、書類が法務局に届いた日付になることです。このため、登録申請日の欄を空白にしておいた方がいいということがあります。
それと、捺印が必要なところと捨印が必要なところには必ず捺印をしておかないと、後で印鑑を持って法務局に行かなければならなくなりますから、注意してください。
費用は、印紙代と登録完了証を送ってもらう切手代、それに郵送代だけです。
住所変更登記が必要なケース
抵当権抹消登記をする時には、必ず不動産登記上の住所と名前が一致していなければいけません。
抵当権設定契約書を見れば契約時の住所が分かりますから、まずそれを確認して契約時の住所と現住所が違っていないか確認してください。
前にも書きましたが対象物件を賃貸用などにしていて、自分自身は別のところに住んでいたが引っ越しなどで住所が変わってしまう場合もあります。このようなケースでは住所変更登記が必要になります。
住所変更登記の費用
住所変更登記にかかる費用ですが、自分で行った場合と司法書士に依頼した場合では、かなり大きな違いがあります。
自分で行った場合ですが、登録免許税1,000円と事前チェック400円、郵送代などの費用が数百円だけです。
司法書士に依頼した場合は、住所登録変更報酬8,000円前後と免許税1,000円、それに完了後の証明書報酬500円+取得費1,000円、事前チェック1,000円、日当などが数千円かかりますから、だいたい15,000円前後になります。
住所変更登記での必要書類
抵当権抹消登録に係る住所変更登記に必要な書類ですが、登記名義人住所変更申請書と、登記原因証明情報になる住民票や戸籍の附票になります。
登記名義人住所変更申請書は、法務局へ行ってもらうか法務局のホームページからダウンロードをして揃えます。
書き方は難しい事はありませんからネット上で検索をして、それを参考にして書けば簡単に作成することが出来ます。
次に住民票を取得するケースですが、登記簿上に記載されている所有者の住所から現住所までの移転が1回の場合です。
戸籍の附票が必要なケースは、登記簿に記載されている所有者の住所から現住所までの移転が複数回になっている場合です。
以上が抵当権抹消手続きになります。自分で行う際には、書類の書き方や必要書類について不安があるかも知れませんが、法務局で相談にのってもらえます。売却益が出ないで、少しでも費用を抑えたい人は、抵当権抹消手続きを自分でやってみるといいかも知れません。