[PR]
あまりうれしい話ではありませんが、多重債務や多額の債務を抱えてしまい返済不能になった場合ですが、自己破産をして債務に対する免責を受けることがあります。
自己破産する場合ですが、法律上認められている手元に残せる財産(現金99万円以下)を除いて、他の財産はすべて現金化されて債権者に配当されます。
不動産を所有している場合だと、現金化されて債権者に配当されますので、基本的には債務者の手元には残りません。
自己破産をして家や土地を処分されたら、その後の生活はどうなるのか、処分の対象にはならないで済むケースはあるのかなど、多くの疑問があるので、まずは自己破産の仕組みから順番に解説していきます。
自己破産とは
自己破産とはどういうことをいうのかですが、多重債務や多額の債務を抱え込んだため返済不能になってしまい、自ら裁判所に破産の申し立てをすることをいいます。
裁判所が破産を認めると手持ちの財産の中から自由財産を残して、他のものは全て現金化の上で債権者に配当され、それでも不足している債務に関しては免責許可を出します。この結果、債務者は手持ちの財産以上の債務返済をしなくても良いことになります。
ただし、裁判所が免責を認めない不許可事由があると、裁判所は破産を認めませんから債務者はすべての債務に責任を持って返済を続けることになります。まず免責不許可事由について解説していきます。
免責不許可事由とは
裁判所が免責を認めない不許可事由として、以下に挙げる5項目が主なものになります。
- 浪費行為があったと裁判所が判断した場合
- 破産前に特定の人にだけ借金を返したことが判明した場合
- 換金行為があったと裁判所が判断した場合
- 名義を偽っていた借金が判明した場合
- 不誠実な態度をした場合
それぞれの項目について説明をしていきます。
浪費行為があったと裁判所が判断した場合
債務の原因がパチンコや競輪・競馬、競艇などのギャンブルだった場合や、高額な買い物や高級飲食店で、自分の収入に見合わない浪費行為があったと裁判所が判断をすると、免責不許可になります。もちろんすべてのケースではなく、浪費の程度にもよります。
破産前に浪費を止めて生活態度を改めていた場合などには、免責を認めるケースも多くあります。
破産前に特定の人にだけ借金を返したことが判明した場合
破産法には「債権者平等の原則」ということがありますから、すべの債権者は平等に扱われていなければいけません。
特定の人だけに返済をしていた場合は、債権者平等の原則から外れてしまいます。このような返済の仕方を法律用語では偏頗(へんぱ)弁済といって、発覚した場合には免責不許可事由になります。
換金行為があったと裁判所が判断した場合
換金行為とは、クレジットカードで買った商品を、安く売って現金化をしていた行為をいいます。換金行為を続けていると、債務が増え続ける一方になりますから、不当な債務負担行為といわれる免責不許可事由になります。
もちろんたった一度や二度やったからといって、必ず免責不許可になるわけではなくて、程度が著しい場合が対象になります。
名義を偽っていた借金が判明した場合
すでに債務の返済が出来ない状態に陥っているにも関わらず、生年月日や氏名を偽って借金をしていた場合がこのケースです。一種の詐欺罪に相当しますから、刑事告発される可能性もあります。
この他にも、いわゆる闇金から借金をしていた場合も、不当な債務負担行為とみなされて免責不許可になることもあるようです。
不誠実な態度をした場合
債務者が債権者会議を理由もなく無断で欠席をしたり、破産管財人の質問に対して誠実な回答をしないなどの態度をすると、免責不許可事由に相当します。
以上が免責不許可事由になります。次に同時廃止と少額管財の2種類の自己破産について解説していきます。
同時廃止とは
自己破産をする債務者に、33万円以上の現金や価値が20万円以上の資産がない場合で、さらに破産管財人が免責について調査の必要がない場合の手続きを同時廃止といいます。
つまり、破産手続き開始と同時に破産手続きが終了するため、同時廃止といいます。免責手続きをするだけですから、破産申し立てから3~4ヶ月ですべての手続きが終了します。
少額管財とは
自己破産をする債務者に、33万円以上の現金や価値が20万円以上ある資産がある場合と、免責不許可事由がある場合の手続きです。
他にも債務が高額な場合や、手続きに異議を唱えて破産に納得をしていない個人債権者がいるケースと、債務者が個人事業を行っている場合も少額管財になります。
少額管財は裁判所から選任された破産管財人が債務内容や財産、それに免責不許可事由を調査して、すべての調査が終わった段階で問題がなければ免責手続きをしますから、かなり時間がかかります。破産申し立てから終了までは、大体6ヶ月程度必要です。
自己破産の流れ
では、自己破産をするためには、どのような流れがあるのか見ていきます。
前にも書いたように、自己破産には同時廃止と少額管財の2種類があります。それぞれ、普通は弁護士などの代理人を立てて破産申し立てをしますから、代理人を入れた流れで説明をしていきます。
同時廃止完了までの流れ
自己破産を申し立てて免責許可が完了するまでには、以下のような8つのステップがあります。
- 代理人が受任
- すべての債務を利息制限法の法定金利に引き直す
- 申し立て書類の準備
- 申立と即日面接
- 破産手続き開始決定
- 免責審尋
- 免責許可決定
- 免責許可決定確定
では、それぞれの項目について説明をしていきます。
代理人が受任
自己破産をする債務者から代理人の依頼があって、弁護士が代理人を受任すると、当日貸金業者を含めたすべての債権者に受任通知を発送して、以後の取り立てや返済を止めます。
弁護士が介入した場合、貸金業者が本件の債務者に取り立てをする行為は、法律によってできなくなるため、取り立てや返済を止めることが出来ます。
すべての債務を利息制限法の法定金利に引き直す
貸金業者によって開示された資料と、依頼人である債務者の取引履歴の資料を照合して、利息を法定金利に引き直して計算をして債務額を確定します。期間は1ヶ月から3ヶ月程度かかります。
この段階で過払い金が発生している場合には、代理人が返還請求をします。
申し立て書類の準備
依頼者である債務者は代理人の指示によって、申立書やその他の書類の下書きを作成します。代理人は、依頼人から提出された下書き書類を申立書として完成させます。
申立と即日面接
代理人は裁判所で受付を済ませると、その場で裁判官と面接を行います。これを、即日面接といって、代理人のみが裁判官と面接をしますから、依頼者である債務者が面接をする必要はありません。
破産手続き開始決定
即日面接の当日17:00に裁判所から「破産手続き開始決定・同時廃止決定」の通知が出ます。この時に、免責審尋期日が決められます。
免責審尋
依頼人である債務者は決められた免責審尋の日に、代理人と裁判所に行って裁判官と面接をします。この時に、負債の内容や負債を負った事情などを聴かれます。
免責許可決定
免責審尋の日からほぼ1週間後に、裁判所から免責許可決定の通知が代理人に届きます。
免責許可決定確定
免責許可決定から1ヶ月が過ぎると、法的に免責許可決定が自動的に確定されて、同時廃止手続きは完了します。
少額管財完了までの流れ
自己破産を申し立てて少額管財が完了するまでには、以下のような9つのステップがあります。
- 代理人が受任
- すべての債務を利息制限法の法定金利に引き直す
- 申し立て書類の準備
- 申立と即日面接
- 破産手続き開始決定
- 管財人面接
- 債権者集会
- 免責許可決定
- 免責許可決定確定
同時廃止と違う項目は、管財人面接・債権者集会があることと、免責審尋がないことです。では、管財人面接と債権者集会について説明をしていきます。
管財人面接
即日面接から1週間~2週間後に、管財人の事務所で管財人面接を実施します。依頼人である債務者と代理人が一緒に管財人の事務所に行って、債務の内容、収支、財産の内容、免責の審問などの質問を受けます。問題がなければ30分程度、長くても1時間以内には終わります。
債権者集会
裁判所で、裁判官・破産管財人などを交えて、依頼者である債務者と代理人が債権者と集会を持ちます。
債権者集会では、破産管財人から財産・収支の報告、それに面積について意見申述があります。この時に、免責許可に反対意見が出ると破産管財人や代理人から、さらに詳細な報告がありますが、何もなければ長くても10分~15分程度で終わります。
家が処分されない例外
自己破産をすると通常は債務者が所有している家や土地も、債権者への配当金の原資として裁判所によって売却をされます。
売却の方法は競売といって、落札価格が一番高い入札者に売られる方法と、任意売却といって、管財人が主導をして不動産業者を媒介させて売る方法を取ります。しかし、例外的に債務者が所有している不動産を売却しないことがあります。
どんなケースだと売却の対象にならないのかというと、売却価格が極端に低い物件の場合は競売も任意売却も出来なくなるため、裁判所が売却命令を出しません。
例えば、地価の低い田舎の土地に建っている築年数がかなり古い物件や、利用価値のないような山、資産価値のないような土地などだと、裁判所は資産価値がないので売却が出来ないという判断をすることがあります。このような場合だと、自己破産後も債務者は家や土地を所有し続けることが出来ます。
競売や任意売却に関してはこちらのページで解説しています。競売や任意売却の仕組みを詳しく知りたい人はチェックしてみて下さい。
競売や任意売却の仕組みをチェックする
自己破産後の生活はどうなる?
自己破産をして免責になったので、債務から逃れられたのは良いけれど、その後の生活はどうなるのか気になります。
まず、破産者が就けない職業があり、以下の通りです。
- 弁護士
- 司法書士などの士業
- 生保の募集員や損保の代理店
- 貸金業や証券取引の外交員などのような金融商品
- 警備員や旅行業者
- 宅建業
- 公安委員会委員
- 公正取引委員会委員
これらの制限については、裁判所から免責決定通知があって、確定すると解除になるケースもありますが、基本的にこういった職種に就職をすることは難しいと思った方がいいようです。
その他にも、クレジットカード取得と使用不可、新たに借り入れを起こすことが出来ないなどの制限があります。また官報には載りますから、知人友人で官報を見るような職業の人がいたら、知られてしまいます。
しかし、個人破産を理由に会社を解雇されることはありませんが、昇進に影響することはあるようです。それと、自分で事業をやっていた場合には自己破産後、年齢にもよりますが就職できる職種が限られてくるようです。
金融業界以外のサラリーマンの場合はあまり影響がないといえますが、自営業だったり個人経営の会社を経営していた場合には、かなり影響があると考えた方がいいようです。
個人破産をすると、ただ、家や土地を失うだけではなく、ある意味で人生が変わってしまう人もいるといえます。くれぐれも、借り入れをする時には、しっかりとした返済計画を持って、その通りに返済を実行することが大切です。