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ちょっと古いTVドラマなどで、家の権利証を奪い合うという設定のストーリーがありました。親族間で、祖父母名義の権利証を奪い合って、骨肉の争いをするという感じでした。
この権利証ですが、どこにあるのか知らない人もいます。もし失くしてしまうとどうなるのか、家を売ることが出来なくなるのかなどという疑問があります。
家の権利証についての疑問が解決できるように、分かりやすく解説をしていきます。
不動産の権利証とは
権利証はそれ自体が不動産の権利そのものではありません。不動産の権利を持っていることを証明するものです。
不動産権利証は不動産の不動産登記法に基づいて、法務局に不動産を登記をしたときに作成されます。そして、その種類は2種類あります。
1つは明治32年から始まった制度下で作成された紙の登記証で、もう1つが平成16年に改正された不動産登記法で制定されている、パスワードの権利証です。
新制度になってからは、パスワードの登記証が基本になっていますが、今でも紙の登記証は有効です。しかし、不動産を譲渡した場合や新たに取得した場合には、パスワードの登記証に書き換えられます。
登記証というのは通称で、紙の登記証の正式名称は「所有権の権利に関する登記済証」といって、よく登記済証ともいわれます。
登記済証は申請人(司法書士や弁護士の場合が多い)が用意して法務局に提出します。法務局が内容を確認して、受付年月日や受付番号が書いてある朱印を押して返してくれたものを一般的に権利証と言っています。
法務局の登記官はこの朱印の受付年月日と受付番号が、登記簿のものと一致するかどうかで権利証が本物なのかを判定していました。
パスワードの権利証の正式名称ですが、「登記識別情報」といいます。英・数字で構成された12桁のパスワードですが、プリントアウトした用紙を手渡されます。他人に見られないようにシールで目隠しをされていますが、現在袋とじに移行中です。
登記識別情報は、紙の登記証と同じように不動産の権利者であることを証明するもので、物件ごと、権利者ごとに発行されて法務省のコンピュータシステムに登録されています。
権利者の手元にあるプリントアウトをした登録識別情報と照合をすることで、法務省はその人物が不動産の権利者かどうかを判定することが出来るようになっていますから、紙の権利証よりも精巧なシステムになっています。
権利書がない場合の売却手続き
権利証を何かの理由で紛失した場合、不動産を売却できないのかという疑問があります。理由は別にして、家の売却が決まったが権利証が見当たらないときなど、かなり焦ることになります。しかし、実は権利証が無くても家を売却することは可能です。
具体的な流れとしては、事前通知制度を使うか、あるいは本人確認ができれば、問題なく権利証をなくした不動産の売買が可能になります。この辺が、有価証券とは違うところです。
事前通知制度
事前通知制度ですが権利証がない状態で、登記申請書に権利証を提供できない理由を記載して、そのまま登記申請をします。こうしておくと、後日法務局から本人受け取り限定で通知書が送られてきますから、実印を押して印鑑証明と一緒に返送します。これで、法務局では間違いなく本人が自らの意志で登記申請をしていることが確認できます。
これを事前通知制度といいますが、すべてのケースに使えるわけではないので、本人確認情報を作成する方法が一般的です。
本人確認情報の作成
本人確認情報作成の手続きは非常に煩雑ですから、登記の専門家である資格代理人の司法書士に依頼した方がスムーズにいきます。
司法書士は依頼を受けると、面談などを経て本人確情報を作成していきます。作成する際に司法書士から要求される書類があります。
一号書類として、以下のものから1つ以上が必要になります。
- 運転免許証
- パスポート
- 住民基本台帳
二号書類として、以下のもので住所・氏名と生年月日が記載されているものから2つ以上が必要になります。
- 国民健康保険などの被保険者証
- 健康保険日雇特例被保険者証
- 共済組合員証・加入者証
- 国民年金手帳
- 児童扶養手当証
- 特別児童扶養手当証書
- 母子手帳
- 身体障害者手帳
三号書類として、2号書類の中から1つ以上と公官庁から発行・発給された書類及びそれに準ずるもので、当該申請人の住所・氏名・生年月日の記載のあるものを1つ以上。
これらが必要になります。このような手続きを踏んで本人確認ができれば、権利証がなくても家の売却は可能になります。本人確認情報を司法書士に依頼した場合の費用ですが、だいたい5万円ぐらいが相場になっています。
盗まれた場合は?
登記証又は登記識別情報が盗まれてしまったことが分かったら、できることは2つで、失効申請制度を使うか、不正登記防止申出制度を使うかになります。
失効申請制度の手続き方法
1つは、登記識別情報にしか使えませんが、失効申請制度を使うことです。登録識別情報を管理している法務省の法務局に申請して、登録識別情報を無効にしてもらうことが出来ます。
方法はインターネットで申請することもできますし、書面で申請しても受け付けてもらえます。なぜ、紙の権利証ではできないのかというと、権利証を法務局に預けてあるわけではありませんから、無効などの判を押すことが出来ないからです。
ただし、一度無効にしてしまうと復活させる方法がありませんから、売却などで権利を移転するときには本人確認情報を作ってもらわなくてはいけないので、注意してください。
不正登記防止申出制度の手続き方法
もう1つの方法ですが、不正登記防止申出制度を使う方法方です。これは紙の権利証でも、登記識別情報でも、どちらも使える方法です。
こちらは法務局の窓口に行って権利証が盗まれた可能性があるので、自分以外の第三者が登記に来ても受け付けないようにお願いしておく方法です。
法務局に不正登記防止申出の書類を提出しておくと、受け付けた日から3ヶ月間登記を見張ってくれます。この間に誰かが登記に来た場合には、法務局から申請人に確認の連絡が入りますから、本人以外ではないと回答をすると申請は登記申請却下されます。
警察に届ける際の注意点
警察に届けるのは、失効申請や不正登記防止申出を申請してからにしないと、被害届を出したり現場検証などの手続きに時間を取られてしまいますから、その間に素早く不正登記をされてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
この時に、後で警察が的確な捜査をやりやすくするために、あまり現場を荒らさないで現状保存をすることが犯人逮捕の大きなポイントになりますから、ここも注意が必要です。
土地家屋の権利証を盗むということは、普通の窃盗犯ではあまり考えららないことですから盗まれてしまった場合、窃盗犯はその道のプロだという可能性が高いので、迅速に不法登記をしてしまう可能性が高くなります。
このような理由から、とにかく不正登記をされないようにすることが最優先になります。失効申請、あるいは不法登記防止申出の2つの申請だけは急いで行う必要があります。
それともうひとつのポイントとして、権利証を使うためには実印が必要ですから、実印と権利証はまったく関係のないところに保管しておくことが、不法登記を予防する大きなポイントになります。
再発行できるの?
免許証や車検証も再発行してもらえるから、もしかしたら権利証も再発行してもらえるのではないか? という疑問があります。
そう考えると権利証も再発行をしてくれそうな気がしますが、実は権利証は再発行をしてもらえません。紙の権利証もパスワードになっている登記識別情報のどちらもです。
理由としては、紙の権利証も登記識別情報も、紛失しても所有権や登記名義を喪失するわけではないからです。
前にも書いたように、権利証がなくても事前通知制度を使うことや本人確認情報を作成してもらうことで、不動産の名義を移すことができるためです。
権利証をなくしたと思っている多くの場合ですが、「大事にしすぎてしまった結果どこにしまったのか分からなくなった」というケースになっていますから、まずは、徹底的に探すことをおすすめします。
ただし、盗難の形跡があったら、すぐに失効申請か不法登記防止申出をすることが必要です。紛失トラブルと避けるには、権利証の管理方法をしっかりしておくのがよいでしょう。