空き家対策特別措置法の特定空き家とその他の空き家の違いは?

空き家対策特別措置法の特定空き家とその他の空き家の違いは?

[PR]

最近、全国的に空き家が問題視されるようになっています。人が長い期間住んでいないと、家の老朽化が早くなったり、知らない人が勝手に住みついたりなど、さまざまな問題が発生しています。

現在、地方の地価が安い地域で空き家が増える傾向があって、今後も増え続けるだろうと予測されています。空き家が増える要因の1つとして、固定資産税の優遇措置が関係しています。更地にすると固定資産税が一気に上がるため、使途不明の空き家が増える大きな原因になっています。

そこで、空き家問題を解決するために、空き家対策特別措置法が制定されました。この法律によって、特定空き家に認定されると固定資産税の優遇措置は受けられなくなったリ、空き家の改善指示が自治体から出るケースもあるので注意が必要です。

それでは、空き家対策特別措置法や特定空き家について、分かりやすく解説をしていきます。

空き家対策特別措置法とは

全国的にみても7軒に1軒の割合で空き家があるといわれていて、その内の半分ぐらいが用途不明の空き家になっているというデータがあります。これが2030年には、3軒に1軒の割合で空き家になると予測されていますから、大変な数になってしまいます。

そこで、空き家問題を解決する目的で、2015年5月26日に特定空き家対策特別措置法が全面施行されました。法律の内容は、空き家対策上、自治体の権限が強く法的に位置づけられています。

倒壊の恐れや衛生上の問題、防犯上や景観上の問題があっても、所有権の問題などで手を下せなかった空き家に対して、今後は、法的な根拠を持って対策できるようになっています。

命令に違反した場合ですが、50万円以下の過料が処せられ、強制撤去をすることも可能になっていますから、かなり厳しい処罰を受けることになります。

国土交通省は特定空き家の判断基準や措置に対するガイドラインを定めて、各自治体に指導しています。

このガイドラインですが、自治体が特定空き家と判断して是正を勧告・命令するときの「一般的な考え方を示すもの」となっていますから、実際には各自治体が地域の実情に合わせた判断をしています。

この為、A市では特定空き家に指定されないような物件でも、B市では特定空き家の対象になってしまうケースもあり得るので注意が必要です。

特定空き家に対する措置

特定空き家に指定されると、具体的にどのような措置が取られるのか、説明をしていきます。取られる措置ですが4段階あって、それは次のようなステップになります。

  1. 改善への助言と指導
  2. 改善が見られなければ勧告
  3. 勧告を無視していると命令
  4. 命令を無視していると代執行

このような手順を踏んできますので、各項目の内容を見ていきます。

改善への助言と指導

指定物件のどの部分をどのように改善するのかという、家屋の解体や立木竹の伐採などを含めて具体的な手段を助言、あるいは指導をします。この時に、一定の期限を付けられることが普通です。

改善が見られなければ勧告

期限が来ても、指定物件に助言や指導のとおりに改善された形跡が見られなければ、この段階で勧告に移行します。勧告になると、固定資産税の優遇措置を外されますから、税金は最大で6倍、都市計画税は3倍に跳ね上がります。

勧告を無視していると命令

勧告を無視していると、今度は猶予期限を付けた改善命令が出されます。この時に、命令を受ける対象者には意見を述べる機会が与えられますから、意見書にして提出しても良いし、意見聴取の形で聞いてもらうこともできます。

なにか、改善できない理由があるのでしたら、この機会にしっかり意見陳述しておくのがよいでしょう。

命令を無視していると代執行

改善命令の猶予期間が過ぎても改善が終わっていなければ、代執行に移行します。命令を受けた時の猶予期間ですが注意しなくてはいけないこととして、猶予期間内に改善を終わらせなければいけないということです。

つまり、改善命令を受けたから工事に着手しただけというような、改善をしているポーズだけで済ませることは出来ません。

家屋の解体を含めて、すべての改善費用は所有者の負担になります。また、所有者が負担できなくても自治体が建て替え払いをして後日所有者に請求がいきますから、改善費用の支払いから逃れることは出来ません。

特定空き家とは

特定空き家とは、空き家であるために物件の周辺に悪影響があると自治体が判断した物件のことをいいます。

適切に管理されていない空き家が防犯・防災・衛生・景観など、地域住民の生活環境に深刻な悪影響を及ぼす原因になっている空き家のことです。

分かりやすくいうと、空き家対策措置法に基づいて、自治体の立ち入り検査や改善の指導・勧告・代執行の対象になっている家屋のことです。

空き家の中には「その他の空き家(住宅)」といって、所有者が転勤や入院、死亡で長期間空き家なっている物件も含まれます。それに、税金対策で放置している物件や、解体費用が捻出できないので放置されているような物件も含まれます。

特定空き家と空き家の違いは、自治体から改善への助言や指導を受けているかいないか、という内容になります。

特定空き家の数は全国でどれくらい?

2013年の数字ですが、全国の住宅総数は約6,000万戸です。そのうち、人が3ヶ月以上住んでいない空き家は約820万戸あって、さらにこの中の320万戸がその他の空き家になっていました。

全国の自治体は1,700ありますが、その中で117の自治体が2,512軒に対して助言や指導をしています。さらに4市区町村で13軒に対して勧告を出しています。この時点では命令や代執行はゼロだったのですが、2015年の時点になると長崎県と神奈川県で、それぞれ1軒ずつ代執行が行われました。

認定の判断基準

特定空き家の認定判断基準ですが、4項目あります。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる恐れがある状態か否か
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となる恐れのある状態か否か
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態であるか否か
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態か否か

このような規定が、特定空き家の認定基準になっています。なんとなく範囲を絞りづらくて、分かりづらいですね。では、具体的にどんな状態になると特定空き家にされてしまうのかという、代表的な例を挙げてみます。

  • 主要構造の腐食などによる家屋の傾きで、倒壊による被害が予想される
  • 設備、門や塀の老朽化で、倒壊や脱落などが予想される
  • 屋根や外壁の剥離で、飛散などによる被害が予想される
  • ゴミなどの放置や不法投棄で、害獣・害虫などの増殖による衛生上の問題が予想される
  • 浄化槽の破損や汚水の流出で、衛生上の問題が予想される
  • 景観計画に不適合で、景観上の悪影響がある
  • 窓ガラスや門扉の破損で、放火や不法侵入など防犯上の問題が予想される
  • 植栽の不整備で、害獣・害虫の増殖による衛生上の問題と道路通行上の問題が予想される

このような具体例が挙げられますが、多くの場合、単独の理由で特定空き家になっているわけではなく、複数の理由が重なり合った状態で特定空き家になっています。放置する時間が長ければ長いほど、状態はひどくなってしまいますから、危険も増えます。

空き家は解体して更地にした方がいいの?

では、空き家にしておくよりも、空き家を解体して更地にした方がいいのかという疑問があります。

空き家を解体すると確かにメリットもありますが、一方ではデメリットもあります。空き家解体のメリットとデメリットを見ていきます。

空き家解体のメリット

空き家を解体した時の代表的なメリットとしては4項目あって、それは次のとおりになります。

  • 土地の有効活用につながる
  • 物件の売却が楽になる
  • 管理の義務がなくなる
  • 防犯・防災の不安がなくなる

このようなメリットがありますので、項目別に内容を見ていきます。

土地の有効活用につながる

空き家をそのままにしておくとやがて建物は荒廃してしまいますから、いずれ特定空き家に認定されてしまう可能性もあります。そこで、いったん更地にしてしまって、土地の有効活用を考えることも1つの方法です。

土地の有効活用については土地面積と地域性がありますが、駐車場にしたり、マンションやアパートを建てて賃貸収入を得たり、など様々ありますから、土地活用を検討している人じゃ不動産業者に相談をしてみることをおすすめします。

あわせて読みたい記事

物件の売却が楽になる

この項目についてはデメリットもありますが、まずメリットから説明していきます。

新築の家を建てようとしている人の場合古い建物が建っていると、新築した自分の家をイメージしづらいため、悩んだ結果購入を諦めてしまうケースもあります。

また、土地付き家屋で売りに出すと、新築を考えている人は解体費用のこともありますから購買意欲が減退するケースもありますので、売りづらくなる場合もあります。

その為、築年数の古い家の場合は、解体をして更地にしてしまった方が売りやすいことが多くなります。

管理の義務がなくなる

空き家の所有者としては、物件を管理する必要があります。そのため、物件が離れた場所にある場合などは定期的に足を運ぶことになりますし、場合によっては業者に頼んで立木竹の手入れや家屋の手入れなどの必要性も出てきます。

しかし、解体して更地にしてしまえばこのような時間もコストもかけないで済みます。

防犯・防災の不安がなくなる

空き家はいくら管理していても、侵入者を防ぐことが出来ない場合がほとんどです。そのため、不審者が住みついてしまったり、最悪の場合は犯罪者が隠れ住んでいたなどということもあり得ます。

さらに、放火の危険性も高くなりますから、空き家に放火をされて隣家が燃えてしまうようなこともあり得ます。

他にも、家屋の程度にもよりますが地震や台風などのせいで、家が倒壊したり瓦が飛んでしまったり塀が倒れるようなことがあると、近隣の住民に物的・人的被害を出してしまうこともあり得ます。

しかし、解体して更地にしてしまえば、このような不安から解放されます。

空き家解体のデメリット

空き家を解体した時の主なデメリットは3項目あって、それは次のとおりになります。

  • 更地にした為に売りづらくなることもある
  • 解体費用がかかる
  • 固定資産税と都市計画税が高くなる

このようなデメリットがありますので、項目別に内容を見ていきます。

更地にした為に売りづらくなることもある

解体して更地にした方が売りやすい場合もある、とメリットのところで説明をしましたが、逆に売りづらくなるケースもあります。

近年、古い家にリノベーションを施して、新築にはない独特の空間を作り出して住みたいという人がいます。古いけれども状態の良い家屋を土地付きで探している人にとっては、家屋を取り壊してしまうと売れなくなってしまうこともあります。

判断に悩む場合は、媒介契約をする不動産業者とよく相談をしてから、解体をして更地にした方がいいのか、それとも家屋を残しておいた方がいいのか決めることが必要です。

解体費用がかかる

家の解体費用は、物件の大きさや構造などにもよりますが、100万円以上の出費になりますから、かなり大きな負担がかかってしまいます。

また、ご近所にもそれなりに迷惑をかけてしまいますから、その配慮をすると、工事代金が高くなることもあります。

ただし、自治体によって金額は違いますが、多くの場合自宅を解体するときには、補助金が出ますから、自治体窓口に問い合わせをしてみることをおすすめします。

固定資産税と都市計画税が高くなる

建物が建っていると、住宅用地なので、固定資産税は最大で更地の1/6に、都市計画税は1/3に軽減されています。しかし、いったん更地にしてしまうと一気に税金は跳ね上がります。固定資産税は最大で6倍に、都市計画税は3倍になってしまいます。

もしかすると、家を解体した時のデメリットとしては、この項目が一番大きいかもしれません。

空き家と更地の固定資産税の違い

空き家と更地では、固定資産税の税率には大きな違いが出てしまいます。空き家の方が、固定資産税は安くて済みます。

理由ですが、空き家の場合には「住宅用地に係る固定資産税特別措置」という制度のおかげで、固定資産税軽減の恩恵を受けられるからです。

特例措置の概要としては、住宅の敷地が200㎡までの小規模住宅用地の場合、登録価格の1/6が課税標準になります。また、200㎡を超えて住宅床面積の10倍までの部分については1/3が課税標準になります。

課税標準率は一律1.4%ですから、小規模住宅用地の場合ですと、

登録価額×1/6×1.4%

が課税額になります。200㎡を超える規模になると、

登録価格×1/3×1.4%

で課税額を算出できます。

小規模住宅用地で固定資産税3,000万円の土地を例に取って、住宅用地に係る固定資産税特別措置の恩恵を受けている場合と、更地にしてしまったので恩恵を受けられない場合、それぞれ固定資産税がいくらになるのか、算出してみます。

特例措置のある場合ですが、

3000万円×1/6×1.4%=7万円

です。一方、更地にしてしまったので特例措置を外された場合は、

3000万円×1.4%=42万円

になってしまいます。空き家の所有者として考えなくてはいけないことは、空き家対策特別措置法によって、所有している空き家がどんな影響を受けるかと、放置しておくと地域住民にどんな影響があるかという2点です。

もし、所有している空き家が廃屋同然でしたら、やがて自治体から特定空き家の認定を受けてしまう可能性が高いわけですし、地域住民に対する影響も大きいことになります。

特定空き家の認定を受けて、住宅用地に係る固定資産税特別措置の恩恵を受けられなくなる前に、解体を検討してみることも必要かと思います。

※参考ページ:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」