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あまり考えたくはないことなのですが、住宅ローンを払えなくなったらどうなるのかという問題があります。そんなときによく聞くのが「任意売却」と「競売」です。
任意売却も競売もローンが払えなくなった時に所有物件を売却、現金化をして債権者である金融機関に対する返済に充てるということでは同じです。
なぜ任意売却や競売が行われるのかというと、住宅ローンを組む時に金融機関が担保として物件に抵当権を設定するためです。
つまり任意売却も競売も債務者がローンを払えなくなった時に、債権者である金融機関に返済をするために家を売却するという点では同じです。
しかし、任意売却と競売についてしっかり違いを知っておくことがいざという時に必要なので、それぞれについて分かりやすく説明をしていきます。
任意売却とは
任意売却を専門にしている不動産コンサルタントが、債務者と債権者の間に入って調整をして、債権者の合意を得てローン残高を下回る価格で担保物件を売却できる制度を、任意売却といいます。
任意売却は文字通り債務者の任意で行いますから裁判所の関与はありませんので、競売よりは融通の利く制度になっています。
任意売却の流れ
任意売却の流れには11の段階があって、それは以下の通りです。
- 相談
- 現況の把握
- 物件価格調査
- 媒介契約を締結
- 債権者との交渉
- 売却活動
- 購入者を選定
- 債権者の同意を得る
- 売買契約成立
- 引っ越し
- 売買契約の決済
このような段階がありますので、それぞれ内容をみていきます。
相談
どうしても住宅ローンの支払いができなくなって、数ヶ月経つと競売通知が来ることがあります。この時点が、任意売却専門の業者に相談できる最後のチャンスだと思われます。
出来ればもっと早い時点で相談をしたほうが、確実に任意売却のできる確率は高くなりますから、「もう払えそうもない」と思ったときにはなるべく早めに相談をしたほうが良いようです。
現況の把握
任意売却専門業者と面談をして、現況を把握してもらいます。ローン滞納の有無、差し押さえの有無、税金滞納の有無、債権者名、毎月の返済額、ローンの残債などの詳細を担当者に聞かれます。
現況を把握してもらうと、売却方法やスケジュールなどを提案してくれますから、担当者には包み隠さず話さないと後で計画に影響が生じますから、注意してください。
物件価格調査
売却価格を調査して、債権者の同意を得られるようにします。この時に債権者に提示するために写真を撮ったりしますから、拒んだりしないようにしてください。
査定の方法は業者によって違いがありますので、業者に一任してください。最近の傾向として債権者が独自調査をして、売却価格を擦り合わせることが多くなっています。
媒介契約を締結
債権者の同意が得られた売却価格で販売をするために、媒介契約を締結します。基本的には債権者の意向で、専任媒介契約、あるいは専属専任媒介契約になります。
債権者との交渉
債権者である金融機関と、業者の担当者がさらに売却価格などの諸条件を煮詰めてくれます。
売却活動
媒介契約の締結が終わると、レインズといわれている不動産流通標準情報システムや、その他のインターネットサイトに登録して、広く売却物件の情報を流します。
この時に依頼者の希望として、知人や友人に知られたくないということがあれば、できる限りの方法を見つけてくれます。
購入者を選定
レスポンスのあった中からふさわしいと思われる購入希望者と面談をして、資金力や資金計画などについて確認をしてくれます。
債権者の同意を得る
購入申込書と売買代金分配票を債権者に提出して、同意を得てくれます。売買代金分配票には売却に係る諸費用明細や、依頼者の引っ越し費用も含まれるようにしてくれますから、後のことも安心です。
売買契約成立
売り主である依頼者と物件購入を希望している買主の間で、売買契約を締結します。この時に、具体的な引き渡しの日程も決めます。
引っ越し
引き渡しの日程に従って、依頼者は引っ越しをします。費用は売買代金分配票によってもらえるように設定されていますから、安心して引っ越しができます。
売買契約の決済
任意売却の決済は、一般的な決済方法と同じです。この時に、引っ越し費用が支払われます。これで、任意売却はすべて完了です。
任意売却する際の価格
任意売却の多くの場合ですが、物件価格は取引事例法で査定されています。取引事例法とは、任意売却物件と似ている取引事例を比較して、プラスの評点とマイナスの評点を付き合せて査定額を算出します。
物件の所在地と同じ範囲内で取引された事例に基づいていますから、査定で出てくる売却価格はほぼ相場の範囲内だと思ってください。
任意売却後の生活はどうなる?
任意売却をしても、ローンの残債を完済できるとは限りません。残債が残っている場合ですが、やはり支払う義務があります。
毎月いくら支払うのかについては、債権者と交渉をするときに業者が手伝って低額になるようにしてくれることもありますが、ゼロにはできません。このため、毎月の支払いは継続することになります。いわゆる任意整理に当たります。
他にも残債について全額とはいかないけれども、ある程度の金額を免除してもらえる個人再生法を選択するケースもあります。
任意売却後の生活は、ローンの残債についてどの道を選択するかによって大きく左右されますから、司法書士や弁護士と相談をすることも視野に入れたほうが良いようです。
競売とは
競売とは住宅ローンを支払えなくなって一定期間返済が行われない場合に、債権者である金融機関などが裁判所に申し立てて債務者の不動産物件を差し押さえます。その後裁判所の権限によって強制的に、差し押さえた物件を売却する手続きのことを競売といいます。
競売の流れ
競売の流れには13の段階があって、それは次の通りです。
- 住宅ローンの滞納
- 督促状や催告書の通知
- 代位弁済により債権移行
- 競売申し立て
- 競売開始決定
- 状況調査
- 競売資料作成
- 売却基準価格決定
- 期間入札の公告
- 入札開始
- 開札と買い請け人の決定
- 売却許可決定
- 引き渡し命令
このような流れになっていますので、内容をみていきます。
住宅ローンの滞納
住宅ローンの支払いが滞ってしまいます。この時でしたらまだ金融機関との、支払い条件の見直しをして毎月の支払額を変更できる余地があります。
督促状や催告書の通知
金融機関から返済に関する督促状や催告書が送られてきます。数ヶ月滞納をすると、個人信用情報機関に登録されてしまいます。
代位弁済により債権移行
督促状や催告書に従わないと、「期限の利益喪失」の条項によって一括返済を求められます。当然支払えませんから、ローンを組む時に契約している保証会社が代位弁済をします。この時に債権は金融機関から保証会社に移行します。以後の交渉は、保証会社とすることになります。
競売申し立て
債務者が任意売却の意思を示さないと、債権者は裁判所に競売申し立ての手続きをします。
競売開始決定
債権者側に何か違法なことや不備がない限り、裁判所は競売開始決定の通知を債務者に送ります。その後競売に向けた手続きは、どんどん進行していきます。
状況調査
裁判所の執行官が訪ねてきて、写真を撮ったり内外の状況を調べていきます。
競売資料作成
競売資料として物件明細書、状況報告書、評価書の3点が作成されます。これらの資料は、今後の競売の資料として使われます。
売却基準価格決定
執行官が訪ねてきてから3ヶ月程度経つと、裁判所から売却基準価格と入札期間、それに開札期間の通知が来ます。
期間入札の公告
裁判所のホームページとその他の媒体に、期間入札を公告されます。
入札開始
公告後1ヶ月以内に入札が開始されます。入札の期間は大体1週間が普通です。
開札と買い請け人の決定
入札期間が過ぎてから1週間後に開札が行われて、最高値を付けた人や企業が買う請け人になります。
売却許可決定
裁判所は買い請け人に売却許可通知を送ります。通知を受け取った買い請け人は、残金を支払って所有権の移転をします。
引き渡し命令
所有権の移転が終わると裁判所から引き渡し命令が出ます。無視していると強制退去になります。また、引っ越し代金は出ないケースがほとんどです。
競売される際の価格
競売価格の決め方ですが、民事執行法に則り決定されています。つまり民事執行法に規定された次の条文によって、競売物件の価格が決まっています。その条文は以下の通りです。
「一般の取引市場において形成される価格ではなく、一般の不動産取引と比較しての競売不動産特有の各種の制約(売り主の協力が得られないことが常態であること、買受希望者は、内覧制度による他の物件のように内部の確認が直接できないこと、引き渡しを受けるために法定の手続きを取らなければならない場合上があること、瑕疵担保責任がないこと)等の特殊性を反映させた価格とする。」
このような条文によって価格が決められますから、高くても相場の80%程度で安いと40%ぐらいのケースもあるといいます。
競売後の生活はどうなる?
競売後によって債務がなくなることはありませんから、残債については支払う義務があります。競売時点で債権を持っていた保証会社は、多くの場合債権をサービサーといわれている債権回収会社に譲渡しています。
この時の譲渡金額は残債の数%だといわれていますから、額面金額+5%程度で買い戻すことが出来るといいます。
しかし多くの場合は、自己破産を選択するといいます。競売によって負債総額が減りますから、自己破産はしやすくなるので、この道を選択するケースが多くなるようです。
任意売却や競売を避けるには
いよいよ住宅ローンの支払いができなくなりそうだという時ですが、条件によっては任意売却も競売もしないで済ませることが出来ます。
現状収入があって住宅ローンの返済のみを滞納している場合は、裁判所に個人再生を申請できます。公的機関を利用する方法です。
もうひとつは借入金融機関に相談をして、公的機関を利用しない任意整理を利用することです。
どちらの場合も返済の意思が明確で、誠意をもって誠実に対応して意思が通じれば、現状を考慮の上で金利の見直しや月々の返済額の見直しなど、柔軟に相談に応じてくれることが多々あります。
ただし、滞納額が大きいとか今の収入では回収できる見込みがないと判断されると、任意売却をするように説得されます。
ローンは1度返済が滞ると返せなくなることが多いので、できる限り滞納をしないことがポイントですが、万が一、返済がきついと感じ始めたら、早めに家を売却を検討するのも1つの方法になります。
任意売却や競売まで行ってしまうと、相場価格での売却は難しいので、少しでも高く家を売るなら、早目に対応しましょう。実際に売却するしないに関わらず、返済がきついと感じ始めたら、自分の家がどれ位で売れるのか、一括査定を使って調べておくのがおすすめです。
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