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親が認知症になってしまい、施設に入所するケースはたくさんあります。そんな時に、認知症の親名義になっている不動産や使っていない空き地を売却して処分する必要があります。
子供だからと言って、親名義の不動産を勝手に売却することは出来ません。親に承諾を求めて納得したとしても、認知症なので的確かつ有効な判断として法的には認められません。
入所以外にも、認知症になってしまった親名義の不動産を売却するケースはいろいろあるので、どうやったら売却処分できるのか、解説していきます。
認知症の親名義の自宅を売却する際の流れ
認知症の親名義の自宅を売却するためには、普通の物件売買とは違う流れになります。
普通の物件売買でしたら、所有者に売買をしたいというはっきりした意志が認められるため、所有者本人の希望通りに不動産業者と媒介契約をして進められていきます。
しかし、認知症の人の名義になっている物件売買には、法的な問題が絡んでくるので、そこをクリアーしなければ売却をすることが出来ません。
法的な問題とは、成年後見人の申請、家庭裁判所の許可を得る、という流れをクリアーする必要があります。それでは、それぞれの項目について内容を見ていきます。
成年後見人の申請
成年後見人とは民法第843条によって規定されている制度です。精神上に障害のある成年を成年被後見人といい、その人の保護者になるために家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人を、成年後見人といいます。
成年後見人は被後見人の財産的行為に関して包括的代理権を持っていますから、不動産売却にも関与できます。ただし、不動産を売却するためには、本人の生活環境や医療環境を考慮しなければならないため、家庭裁判所の許可を必要になります。
成年後見人を決めるためには家庭裁判所に候補者を申請して、成年後見人制度開始の審判申し立てをすることで審議が開始されます。
申請後に裁判所から依頼された医師が、被後見人の意志判断能力などを診断したうえで、その結果を加味して審判が出されます。通常、申し立て開始から審判が出るまでは3~4ヶ月かかります。
家庭裁判所の許可を得る
一般的な不動産取引の場合だと、売買代金の決済が終わって引き渡しが完了した時点で、すべての手続きは終了です。
しかし、被後見人が所有している不動産を売買するときには、必ず家庭裁判所の許可が必要です。その理由は、いくら成人後見人が判断したとはいえ、正当な理由が認められなくてはいけないからです。
例えば、重度の認知症の人を施設に入れるために多額の資金が必要だとか、自宅で介護をするので家をリフォームする必要があって、その資金を作るために不要な不動産を現金化するなどという正当な理由がなくては、裁判所は承認しません。
裁判所の承認が出れば、そこで初めて契約の締結をして売買代金を受け取り、物件の引き渡しをして手続きは終了です。
成年後見人について
成年後見人は一人ではなく、複数の人がなることも可能です。例えば、医療や福祉、法律問題に明るい人など、分野を分けて被後見人の保護にあたることもできます。また、法人が成人後見人になることもできます。
後見人になれる人
成人後見人になる人は、基本的には認知症になった親の面倒を見るためになるのですから、親族がなることが普通です。ただし以下の人は後見人になれません。
- 未成年者
- 破産者
- 被後見人に対して訴訟を起こした人やその配偶者と直系血族
- 以前に後見人を解任された経歴のある人
- 行方が分からなくなっている人
これらに該当しなければ、法人でも後見人になれますが、裁判所が認めないケースもあります。その場合は後見人候補者名簿の人物から選任されます。名簿に記載されている人物は弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士など何らか資格を持っている人が多いです。
一般的に後見人と言われていますが、細かく分けると法定後見人と任意後見人という2種類の呼び方があります。
法定後見人とは、被後見人が認知症などを発症した後に、裁判所に申請をして選任された人を指します。任意後見人とは、被後見人が認知症などを発症する前に自分が信用できる人を指名しておいて、将来自分が判断力を失った時に後見役をしてもらう人を指します。
申し立てに必要なものとかかる費用
申し立てに必要なものと費用は、次のようになります。
- 後見人になる人の戸籍謄本 450円
- 後見人になる人の精神鑑定書 5万円~10万円
- 後見登記事項証明書 無料
- 申立書 無料
- 収入印紙代 800円
- 返信用切手 3,000円~5,000円
- 登記手数料 2,600円
合計すると約6万~11万円になります。なお、申し立てを弁護士に依頼した場合には、別途弁護士費用が必要になります。
売却時の注意点
認知症の親名義の不動産を売却するときの注意点は、成人後見人が必要なことと、最終的に裁判所の許可が必要なことです。
裁判所で判断することは、なぜ被後見人の不動産を売却しなければならないのか、という点です。そのチェックポイントは主に4項目あります。
- 被後見人所有不動産のどれを売却するのか
- 誰に対して売却をするのか
- 売却価格と条件はどうなのか
- 売却する必要性はあるのか
ということが、主なチェックポイントになっています。
例えば、認知症患者を受け入れてくれる施設に入れようとしたが、入所費用などが高額などで非後見人所有の不動産を売却する、などという正当だと思われる理由を提示しても、十分な収入と預貯金があると却下されるケースもあるので注意が必要です。
こうして見ると、親が認知症の不動産を売却するには、一般的な売却よりかなり複雑になっています。親がいつ認知症になるか分からないので、健康なうちに今後の家をどうするのか相談しておくとよいでしょう。
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