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不動産というと、すぐに頭に浮かぶことのひとつに、高額な税金ということがあります。
不動産にまつわる税金は様々あって、所有しているだけでかかる固定資産税や都市計画税から、売却や贈与、相続にかかってくる税金など、いろいろと高額な税金がかかります。
中でも気になるのは、売却、贈与、相続にかかる税金です。不動産の所有権を移動するときに、一番節税効果の有るのはどのケースなのか気になります。
売却の場合ですが売却益が出ると所得税と住民税、贈与の場合は贈与税、相続をした場合は相続税がそれぞれ発生します。
売却、贈与、相続のなかでどれが一番節税効果の高い方法になるのか、それぞれの内容を解説していきます。
生前に売却するケース
生前に持ち家や土地を売却・現金化して、それを相続させるやり方です。つまり、現金を相続させる、あるいは相続するという方法です。
その為にはまず、不動産を現金化して所得にしなくてはいけません。その計算方法ですが,
不動産売買価格-(不動産取得費+必要経費)=所得
になります。不動産取得費とは売却をしようとしている不動産の購入費で、必要経費とは不動産業者に支払う仲介手数料などです。仲介手数料の計算方法は、
物件売買価格×3%+6万円
です。この結果、売却益が出ると所得税と住民税がかかりますがマイナスの場合はかかりません。例えば、物件が5,000万円で売れたとします。その物件を購入した価格が5,500万円だとすると、
5,000万円-(5,500万円+156万円)=▲656万円
になります。この場合だと、マイナス利益ですから、所得税と住民税は免除されます。所得税と住民税の課税率は物件の所有期間によって違います。
短期譲渡所得といって、物件所有期間が5年以下の場合だと所得税30%、住民税9%が課税されます。長期譲渡所得といって物件所有期間が5年以上の場合は所得税15%、住民税5%が課税されます。さらに平成49年までは復興所得税が2.1%課税されますから、売却益が出た場合には最低でも利益額(所得)の22.1%が課税されてしまいます。
よくいわれている節税対策に相続時精算課税制度を使えば、2,500万円までは無税で贈与できるということがあります。
この制度は確かに贈与時には無税なのですが、その後贈与者が亡くなって相続が起きた時には、贈与された2,500万円という数字をいったん遺産に戻して総額を算出して、相続税の納税の要否を計算するので注意が必要です。
多くの場合、金額は別ですが相続税が発生しますから、相続税の先送りにはなるけれど完全免除にはなりづらい方法です。
この項をまとめると、物件売買で利益(所得)が発生するのかしないのかで、税率が大きく変わってきます。まずは現在の家の価値を査定して判断するのがおすすめです。
生前に贈与するケース
いわゆる生前贈与という、財産分与の方法です。
贈与者が受贈者を生前に決めてしまい、財産を分与します。受贈者が複数いる場合、不動産などは別けづらいため、贈与者の死後さまざまなトラブルのもとになるケースがありますが、生前贈与をすることによってトラブルを未然に防げることが最大のメリットです。
しかし、相続税の面ではどうなのかといえば、かなりデメリットがある財産分与の方法になるケースが多くあります。
まず、生前贈与をした場合に生じる贈与税について見ていきます。生前贈与の税率は、贈与者が父母や祖父母などの直系尊属からの場合と、直系尊属ではない人からの場合には違いがあります。
以下に、それぞれの税率を挙げておきます。
贈与者が直系尊属の場合
基礎控除後の課税額 | 税率(%) | 控除額(円) |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0 |
200万円超400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
贈与者が直系尊属ではない場合
基礎控除後の課税額 | 税率(%) | 控除額(円) |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0 |
200万円超300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
このページの最後の項目に、相続税の税率を挙げておきましたので比較してみると分かりますが、贈与税の方が課税対象金額は200万円以下から4,500万円超となっていますが、相続税は1,000万円以下から6億円超という金額になっています。
贈与税は1,000万円以下が30%なのに対して、相続税は1,000万円以下の税率が10%となっていますから、贈与税はかなり高税率だといえます。ちなみにここに挙げた贈与税の数字は、金額・百分率ともに贈与者が直系尊属の例を使いました。
それに、もうひとつのマイナス要因として、小規模宅地等の特例という制度を生前贈与では使えません。
小規模宅地等の特例という制度ですが、事業専用地だと400㎡まで、住宅地ならば330㎡までの土地の評価を最大で80%減じてくれる制度です。
例えば、5,000万円の評価額の土地を相続したとします。その評価小規模宅地等の特例制度を使えば、最大で1,000万円まで下がります。そうなると贈与税率は一番低い10%ですが、生前贈与の場合になると30%になってしまいます。
もし、不動産は上手く案分が出来ないからと生前贈与をと考えているのでしたら、公正証書遺言を作成しておくことで、不動産の受贈者を決めておけばトラブルは防げます。
一般的な遺言書ですと複数の受贈者の中の誰かが異議を唱えると、民法の適用範囲で訂正されてしまうこともありますが、公正証書遺言にしておけば異議を唱えても訂正されることはありません。贈与者の希望通りの受贈者に、不動産は相続されます。
死後に相続するケース
このケースが一番一般的です。また、相続に関わる税金だけを見た場合、一番節税になりやすい方法です。
その理由ですが、不動産の評価額によるものと、小規模宅地等の特例を使えることが挙げられます。
不動産の評価ですが、実勢価格といって同じような物件が実際に市場で取引されている価格よりも、だいたい70%~80%ぐらいの評価額になります
つまり、実勢価格が5,000万円の物件でしたら、相続税評価額は3,500万円から4,000万円が課税対象額になります。
ところが、現金や有価証券、骨董品や美術品、貴金属になるとこのような恩恵はありません。現金はその金額どおりに、その他の遺産については実勢価格通りの評価額に直して課税されます。
つまり、生前に不動産を現金化して別けてしまうやり方だと、課税対象は現金ですからその金額通りに課税されることになります。前出の例でいうと、5,000万円で売れた物件の課税対象額は、そのまま5,000万円になります。
この時点で、現金と不動産の相続税評価額には、1,000万円から1,500万円の差が生じます。さらに、小規模宅地等の特例という制度を使うと相続税評価額は、最大で80%減じることが出来ますから、相続税評価額の最小額は1,000万円ということになります。
なぜ小規模宅地等の特例があったり相続税評価額が小さくなるのかということですが、いま住んでいる物件を相続した結果、遺産を相続した人が相続税を支払えなくなった結果、実際の生活が困るようなことを、できるだけ防ぐことが目的です。
したがって、現金や生前贈与には適用されませんから、節税ということに関しては、ここが最大のポイントです。結果的にいうと不動産に関しては、贈与者の死後に相続をする、あるいはさせるパターンが一番節税効果があることになります。
生前贈与のところでも書きましたが、法定相続人が複数いるために自分の死後、不動産を案分しても法定相続人の間でトラブルになることを危惧しているのでしたら、公正証書遺言にしておくと不動産に関するトラブルは最小限度に止めることが出来ます。
基礎控除と相続税率
相続税は、相続をしたすべての遺産にたいして課税されるものではありません。基礎控除とい制度があって相続財産、つまり遺産の総額がこの金額までだったら、課税対象外になりますというボーダーラインのことです。
平成26年12月31日までは、
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の人数)=基礎控除額
でした。例えば、法定相続人が3人いた場合だと
5,000万円+(1,000万円×3)=8,000万円
という計算になりますから、相続財産が8,000万円以下でしたら非課税になっていました。しかし、平成27年1月1日からは改正になっていて、
3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
となっています。例えば、法定相続人が3人いたとすると、
3,000万円+(600万円×3)=4,800万円
までが非課税対象になっています。かなり、基礎控除額が下がっていることが分かります。次に相続税率です。相続税は、法定相続人が受け取った遺産の評価額すべてに課税されるわけではありません。
相続財産から基礎控除額を差し引いた残りの評価額を、民法で定められている相続分に案分した相続額(法定相続額)に対して税率を乗じた数字を出したものが相続税率になります。
法定相分に応ずる相続金額 | 税率(%) | 控除額(円) |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
まとめ
不動産の生前売却、生前贈与、死後の相続で節税効果が高いものがどれか解説してきました。不動産のみで考えると、死後に相続するパターンが小規模宅地等の特例制度が使えるので、節税効果が高い事が分かります。
しかし死後の相続は不動産以外にも現金や有価証券など様々なものが相続が発生するので注意が必要です。
相続や贈与する際は色々なケースが想定されるので、今後家に住み続けるのか?不要なので売却するのか?決まっていないようであれば、一度家族で相談して方向性だけでも決めておくといいかも知れません。
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